プロロジスが4月に開設予定のインキュベーション施設「inno-base TOKYO-OSHIAGE」のプレオープンイベントを開催しました。2回目の今回は「物流施設自動化の実態調査」についてご紹介します。 |
プロロジスは2月、東京都墨田区の「SUMIDA INNOVATION CORE(SIC)」にて、4月に開設予定のインキュベーション施設「inno-base TOKYO-OSHIAGE」のプレオープンイベントを開催。イベントには自治体職員やベンチャー企業社員など約50人が参加し、プロロジス開発部の担当者たちが登壇しました。
当日の様子を2回にわたってブログでご紹介する本シリーズ。2回目は「物流施設自動化の実態調査」についてのお話です。
【プロロジス 開発部ディレクター 本庄哲太】
本日は、スタートアップ企業の皆様や、それを支援する企業の皆様に多数ご参加いただいていますので、参考となる情報をご提供できればと思っております。
そこで、当社が最近実施した「物流施設自動化の実態調査」について、少しお話しさせていただきます。

■ なぜプロロジスが物流現場の自動化の実態を調査したのか
プロロジスは日本において賃貸型の物流不動産という市場を25年間かけて開拓・普及させてまいりました。
事業の性質上、カスタマーの成長が当社の成長に直結します。そのため、物流オペレーションの向上を支援する取り組みを2018年ごろから本格化させました。最初はコンサルティング事業からスタートし、その過程で、物流ソリューションを提供するベンチャー企業の重要性を認識し、出資を行うようになりました。さらに、インキュベーション施設の開設なども進めています。
近年、2024年問題に象徴される労働力不足の深刻化に伴い、物流現場の自動化は避けられないテーマとなっています。弊社としても、さまざまなプラットフォームを活用しながら、<実際にどの程度自動化が進んでいるのか> <どのように自動化を進めるべきか>といった点を調査し、マニュアルの発行などを行っています。
■ 調査概要
今回の「物流現場の自動化の実態調査」では、当社物流施設に入居する60以上のカスタマーにヒアリングを実施しました。特徴的なのは、単なるアンケート形式ではなく、対面で詳細な聞き取りを行った点です。このため、精度の高いデータを取得でき、具体的な理由についても掘り下げることができました。
データによると、全体の約50%が何らかの自動化を導入していました。しかし、そのうち半数以上は単一工程の自動化に留まっており、例えば 「自動梱包機のみ導入」「搬送機のみ導入」 といったケースが多く見られました。
また、複数の工程が統合された自動化を実現しているのは全体の26%に過ぎませんでした。この結果から受けたのは、自動化の普及はまだ限定的だということでした。プロロジス物流施設における最小区画は約2,000坪からと、大規模利用が多いのにも関わらず、半数近くがフルマニュアル運用という現状には少々驚きました

■ 「省人化目的の自動化」が主流に
調査を分析した結果、面積が2万㎡を超えると、自動化率が約60%に達することが分かりました。これは、面積が大きくなるにつれて、<賃料負担が増えるため、保管効率を上げる必要がある><作業エリアが広がるため、歩行距離を短縮したい>といった動機が働くためと考えられます。
それ以上に強い相関が見られたのが 「従業員数」 です。従業員が100人を超える現場では、自動化率が80%以上に達していました。つまり、現状の自動化は 「省人化」 を目的としたものが主流であると言えます。

■ 「物流企業」と「荷主企業」 自動化率に4倍の差
物流業界のプレイヤーには、大きく「物流企業」と「荷主企業」があります。調査の結果、物流企業の自動化率は21%、荷主企業の自動化率は86%と、約4倍の開きがありました。
物流企業が自動化に慎重な理由として、<契約期間が3~5年と短く、投資回収が難しい><荷主ごとに要求が異なり、標準化が困難>といった課題が挙げられました。そのため、自動化の推進には荷主企業の積極的な投資や、業界全体の標準化が重要であることが分かります
■ 物流施設で利用されている自動化ソリューション
実際の現場では、AGV(無人搬送車)、立体型仕分けロボット、AMR(自立型ロボット)といった技術が活用されています。自動化が進んでいるのはピッキングや仕分け作業で、人手がかかる工程ほど導入が進んでいる傾向があります。一方で、荷卸しや積み込みの自動化は進んでいないという課題もあります。これは、現場ごとに異なる運用に適応するソリューションがまだまだ不足しているためと考えられます。

■ プロロジスの自動化支援への取り組み
プロロジスでは、自動化企画のサポートとしてコンサルティングサービスを提供しています。さらに、パートナー企業と連携したソリューションの推進や、カスタマー同士をつなぐコミュニティの運営にも取り組んでいます。4月に開設予定のインキュベーション施設「inno-base TOKYO-OSHIAGE」もこうした取り組みの一環です。
物流の革新に向けて、ぜひ皆さまと共に挑戦できればと考えておりますので、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

イベント終了後には、来場者同士が交流する時間も設けられました。




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