当社は1983年に米国で誕生し、1999年に日本に進出した物流不動産プロバイダーであり、現在ではBTS、マルチテナント型を合わせると国内に70棟以上の物流施設を運営しています。こうした中、他社に先駆けて2008年からは危険物倉庫の開発にも乗り出し、同年に竣工した「プロロジスパーク市川1」や2011年の「プロロジスパーク川島」への併設など、次々に着手。現在、当社が開発した危険物倉庫併設の物流施設は15棟に上っています。

開発のきっかけとなったのは、「危険物倉庫はないのか」という、お客様からの要望でした。とは言え、市川1や川島のころはすぐに埋まったわけではありません。それでもニーズ増加を見越して、差別化戦略の一つとして開発し続けてきたのです。その読みを証明するかのように、2023年5月竣工の「プロロジスパーク古河4」では、竣工前に同施設併設の危険物倉庫が早々に満床となったうえに、その後も問い合わせが続いています。

その背景にあるのは、言うまでもなく社会におけるニーズの高まりでしょう。一般に危険物というと工業用薬品などをイメージしがちですが、日常で使用する化粧品や香水、ヘアスプレーなども、その成分量に応じて危険物として扱われることがあります。つまりECで販売される商品も数多く存在するわけです。ですが、これまで多くの危険物が、普通倉庫に入れられていたのが実情でしょう。さらに新型コロナウイルスの流行によるアルコール消毒液の流通の増加もあり、危険物の取扱に関するコンプライアンス順守を求める動きが加速しているのです、しかし、社会的なニーズが急速に高まっているにもかかわらず、危険物倉庫の供給自体は増えていないのが現状です。

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佐藤 秀征(開発部 部長/エグゼクティブ・ディレクター)
HAZMAT(危険物)倉庫〔プロロジスパーク市川1〕HAZMAT(危険物)倉庫〔プロロジスパーク川島〕
プロロジスパーク市川1併設の危険物倉庫(768574)
プロロジスパーク川島(ギャラリー 危険物倉庫|768574)

法の規制やコスト増大など、開発の行く手を阻む課題が山積

一般論としてですが、危険物倉庫の開発が進みにくい理由はいくつか考えられます。一つは建築基準法や消防法といった法律により、保管する建物の構造や危険物の指定数量、人員体制などが厳しく定められており、しかも、建設するには消防との事前協議、および許可申請も必要なこと。例えば、建物で言えば平屋でなければいけないとか、荷物の搬送時に雨でぬれないように庇を作れば、その先端から10mは空間をつくらなければいけない。同じ倉庫スペースでも、保管物の燃焼性の危険度に応じて置ける量が変わってしまう。倉庫内では作業をしてはいけないといった規制がいくつもあります。
さらに、多くの危険物をまとめて保管できるようにするには、工業専用地域でなければ建設できないといった地域の縛りや、同じ消防法を適用するはずなのに、所轄によって見解の違いあるなど、一筋縄ではいかない法律上の規制が多いのは事実です。また、平屋であるにもかかわらず、消防設備などの関係で普通倉庫より建設単価が大幅に高くなります。しかも、余分な土地を使わなければならないため、経済合理性に欠けるのは明らか。当然、賃料も高く設定せざるを得ません。

加えて現在、今後の大幅なニーズの拡大が予想されるリチウムイオンバッテリーに関してはスプリンクラーの設置などで、規制緩和するという話もあります。仮に他の商品についても、大幅な規制緩和が実施されると危険物倉庫の存在意義自体が脅かされる可能性もあるのです。言い換えれば、BTSならまだしも、お客様がつくかどうか不明確なマルチテナント型との併設は、それだけチャレンジングなものなのです。

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松野 瓦吾(コンストラクション・マネジメント部 ディレクター)

こうした多くの課題が存在するにもかかわらず、先にも述べた通り当社では、これまで15年にわたって15棟の危険物倉庫を開発してきました。計画を立てる上でまず考えるのは、その立地です。港に近い位置であれば原材料系で、内陸なら完成品向けの倉庫として利用されるケースが多いので、まずはそこを見極めます。

次に考えるのは普通倉庫とのバランス。危険物倉庫は土地の使い方に制約があるので、それを踏まえながら普通倉庫をどれだけ大きくとれるかが設計担当の腕の見せ所でしょう。当社には、これまでの経験から、この土地の顧客はどんな荷物を置くのか、その時普通倉庫はこれくらいで危険物はどれくらい、という数字が経験値として備わっています。さらに既存のお客様にヒアリングできるため、ご指導いただきながら開発することができるのです。

次に考えるのは、敷地内の動線です。トラックの出入りが多い一般倉庫と危険物倉庫の動線が、併存しながらもお互いにバッティングしないように、さらには安全性や効率の面から、トラックと一般車両の動線にも配慮します。こうして仮説を立て、投資効率と容積率の昇華とのバランスを考慮しながら、マーケティングと設計、双方の観点から一番いいところを探して設計するようにここr掛けています。

建物については、保管する物品によって仕様が変わりますが、基本的には汎用性を考慮して、引火性液体の性質を有する「第4類の危険物」の保管を想定して設計をスタートさせます。そこに例えば工業専用地域かどうかといった法律のハードルが加わることで、ここにはどんな商品しか、あるいはこれだけの量しか入れられない、という上限が決まるのです。そのため、必ずしもお客様のニーズを100%満たすことはできないかもしれませんが、話し合いのうえで、ご了解いただくようにしています。

これは余談ですが、以前、普通倉庫を建設中のお客さまから、当初計画になかった危険物倉庫を「10坪でもいいから作ってほしい」というお話をいただきました。すでにその時点で、全体の工事が半ば完了していたのですが、そこから置きたい商品とその数量などをヒアリングしたところ、法令を満たす危険物倉庫の増築が可能でした。そこで敷地内のどの位置が最も適切で、今までの計画に干渉することなく建設できるのかを考え、何とか実現することができました。これも社内に設計部門があることが幸いしたと言えるでしょう。

HAZMAT(危険物)倉庫〔プロロジスパーク猪名川1〕
HAZMAT倉庫(プロロジスパーク猪名川1)
HAZMAT倉庫(プロロジスパーク猪名川1)

HAZMAT倉庫8棟が集積する「プロロジスパーク古河6」

こうした中、当社では現在、HAZMAT倉庫8棟から成る「プロロジスパーク古河6」を開発中です。場所は当社が有する、総面積約5万3,000坪の「プロロジスパーク古河プロジェクト フェーズ2」内で、工業専用地域にあたる敷地面積約6,400坪、延べ床面積約2,360坪の平屋建で、2024年2月着工、2025年1月に開業する予定です。ちなみにHAZMATとは、「hazardous material(危険品)」を省略した言葉で、法律で指定された危険品の保管施設をHAZMAT倉庫と呼ぶことにしたのです。

計画のきっかけは、先述した通り古河4開業時の問い合わせが多数に及んだことです。工業専用地域なのでいいものが建てられますし、フェーズ2の大きな敷地内なので、古河4のお客さまにも合わせてお使いいただけます。もちろん、新たなお客様にもご活用いただけます。2023年7月にプレスリリースを出したところ、幸いにも今まで以上の反響をいただき、自身を深めているところです。

今後、ますます危険物保管に対する必要性が高まるであろう中、当社ではお客様のニーズに対応できる、最適な施設開発を進めていく所存です。

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